こんにちは、15年勤めたデザインプロダクションを辞めてフリーになったデザイナーの中川あるくです。
多くのデザイナーを悩ませるものの1つが、Illustratorファイルのないロゴ。
名刺やパンフレットや看板など、ロゴは様々なツールに使用されるのに、いざ発注を受けるとデータを持っていないという企業が多いんです。
規模の大小に関わらずロゴは企業の顔であり、大切な資産です。
ロゴデータはしっかり自社で管理しましょう。
今後失敗しないように、この記事は起業直後の方に読んでほしいですね。
さくっと読むための目次
なぜか存在しないロゴデータ
僕が独立したと聞いて、友人が商品ラベルのデザインを発注してくれました。
ありがたい。
この商品ラベルは友人の会社ともう1社のコラボ商品のラベルに使うそうで、それぞれの会社のロゴを入れたいとオーダーがありました。
じゃあ、ロゴのIllustratorファイルを支給してと伝えると、コラボ先の会社はロゴがあるけどデータはないとのことでした。
この「ロゴはあるけどデータはない」というのは、デザイナーを困らせるよくあるパターンなんですよ。
看板などのサインはあるのに、データが存在しない不思議
近年ではCI(Corporate Identity)やVI(Visual idntity)という考え方が浸透して、企業の資産としてロゴを管理・運用するようになってきたけれど、一昔前までは無秩序でした。
企業側がロゴデータを保持する意識も低くて、例えば看板をつくってもデータはもらわないとか普通にある。
たぶん、Illustratorのファイルをもらっても、WordとExcelしかない企業ではデータを扱えないから関心なかったんでしょうね。
あくまで想像ですけど。
ちなみに、デザインをパソコンで制作する以前は、ロゴは「清刷り」で管理されていました。
印刷で、校正を終えた活版・凸版などを写真製版などの版下にするため、良質の紙にきれいに刷ること。また、そのもの。
コトバンクhttps://kotobank.jp/word/%E6%B8%85%E5%88%B7%E3%82%8A%E3%83%BB%E6%B8%85%E5%88%B7-246480
パソコンでデザインするDTPの普及は1990年代前半から。
以前はデータじゃなくて紙だったんですよ。
画像データだけでは不十分
ロゴデータはこれしかないとjpegなどの画像データを渡されることがあります。
この場合、webサイトで使っているものをドラッグコピーして渡される場合がほとんどです。
Webで使用しているものは、解像度の都合で印刷では大きく扱えません。
例えばwebサイトからコピーしたデータが幅60mm高さ15mm画像解像度72dpiの場合、印刷で使用できる画像解像度に変更すると幅12.5mm高さ3.2mmの大きさになります。
およそ1/5の大きさ、これではロゴとして認識できませんよね。
ロゴ以外でも、webサイトのデータは印刷には使えませんので、データの支給には気をつけてください。
稀に印刷にも使える大きな画像データを持っている方がいますが、白抜きにしたり、背景の上に配置するために不要な部分を切り抜いたりと、デザイン上の処理を施す時に画像データは手間がかかる上に仕上がりが悪くなってしまいます。
一般的にデザインはIllustratorというアプリケーションを使うので、Illustratorで扱いやすいデータを手元に持っていた方が良いです。
そもそもロゴ自体、Illustratorでつくっているハズなので、Illustratorファイルが存在しているハズなのです。
必ずイラストレーター(ai)ファイルを取得しよう
近年は飲食店やヘアサロンなど、店舗、webサイト、メニュー、名刺など一式でプロデュースする場合が多くみられます。
そういったサービスを使って起業する場合、ロゴデータを納品物として取得してほしい。
ファイル形式はもちろんIllustrator(ai)形式だ。
もちろん看板やwebサイト、名刺やパンフレットなど個別に発注していても、一番最初にロゴをデザインした制作会社がIllustratorでロゴをつくっているハズ。
ロゴは必ずIllustratorファイルで納品してもらおう。
Illustratorファイルを持っていれば、その後のツール制作時のデータの支給が非常に楽になります。
シグネイチャーもつくっておこう
予算に余裕があれば、ロゴの運用マニュアルをつくっておいた方が良いです。
ガチな運用マニュアルは様々なツールの展開例などまで作成してあって、ロゴ開発にプラスして100万円~という予算になります。
そこまでのものは必要ないので、ロゴ配置の組み合わせ、4色印刷で使用する色構成と1・2色印刷などで使用する特色インクの色指定をまとめたシグネイチャーだけでも最低限定めておきましょう。
この程度であればロゴ開発にプラス1万円程度で納品データと合わせてデザイナーがまとめてくれると思う。
この必要最低限のシグネイチャーがあれば、ロゴの予期せぬ改変を防ぐことができます。
経験値の低いデザイナーさんはロゴの色を変えたり、変形させたりとか、平気でやってきますので気をつけて。
ツールを作成する時にロゴデータと一緒に広告代理店、印刷会社、デザイナーに支給しよう。
ロゴ運用マニュアルやシグネイチャー制作の目安はこんな感じです。
大企業が制作するガチのロゴ運用マニュアル
ロゴデザインのコンセプト説明、ロゴの色構成などのデータ、特色指定、白抜き・1色などの展開モデル、縦・横・スローガンとの組み合わせなどのシグネイチャー、可読性に関するガイドライン、ロゴデータの配置と余白設定に関するガイドライン、名刺や封筒や商用車などツール展開例
ロゴ使用における様々な規定を網羅したA4で100ページ程度のボリューム。
予算は100万円くらい。
小さな企業でもこれくらいはやっておきたい簡易マニュアル
ロゴデザインのコンセプト説明、ロゴの色構成などのデータ、特色指定、白抜き・1色などの展開モデル、縦組み・横組みのシグネイチャー、色を主眼にした可読性に関するガイドライン
ロゴ運用の基本ルールをまとめたもの、基本があればツール制作時に困らないよ。完結にまとめればA4で15ページ程度でまとまるよ。
予算は5~10万円くらい。
最低限これだけは持っておきたいシグネイチャー
ロゴデザインの色構成などのデータ、特色指定、1色にしたロゴデザイン
ロゴの仕様書とでも言うのかな。これだけでもロゴ改変を防ぐ最初の一手になります。A4で2枚かな。
予算1万円くらい
予算については僕が見聞きしたり、過去に請求した数字です。
ちなみにロゴ運用マニュアルやシグネイチャーづくりとロゴ開発は別予算だからね。
ロゴは企業の資産 大切にしよう
昨今、企業や商品のブランディングがかなり認知されてきています。
この時代にロゴのデータが無いなんて言っていると、デキるデザイナーからは意識低いなーと見られてしまいますよ。
データの所持から管理・運用まで、ロゴデータは自社管理が基本。
これからロゴをつくる人は、納品の際にシグネイチャーも合わせて作成してもらおう。
ロゴをつくったけどデータが手元に無い人は、改めて制作した会社からデータを納品してもらいましょう。
ちなみにロゴが画像データしかないから、トレスしてくれって依頼もあるけど、作業時間分の費用は払ってくださいね。