こんにちは、15年勤めたデザインプロダクションを辞めてフリーになったデザイナーの中川あるくです。
僕が住んでる名古屋市は、みなさんご存知の通り「国内主要8都市で最も魅力を感じない都市」です。
この「都市ブランド・イメージ調査」は、名古屋の魅力やイメージ、効果的なプロモーションに活用可能な媒体を把握するために名古屋市自身がおこなったもの。
調査結果を受けて、名古屋の魅力を発信するために様々な取り組みを始めています。
で、先日新聞の記事を見てモニョっとした感情を覚えたので、そのことについて語りたいと思います。
名古屋市長の河村たかしさんと市の職員さんに届けばいいな。
さくっと読むための目次
グランドデザイン描けてる?
2017年10月26日、中日新聞朝刊にこんな記事がありました。
名古屋の魅力を発信し、語り合うためのアプリを導入したという報告ですね。
そのアプリのユーザー「名古屋なんて、だいすきサポーターズ」になって、名古屋を盛り上げようという呼びかけです。
名古屋市のwebサイトにもページがありました。
このページを経由してアプリのダウンロードが行えます。
で、このページでも説明されてるんだけど、ベースになっているのはavexのファンクラブ運営システムなんですね。
ここがモニョっとするんですよ。
ファンクラブって内輪で盛り上がる仕組みのもので、そこから情報が外に広がる性格のものじゃないでしょ。
この案件、名古屋の魅力を発信・拡散するための流れがきちんとデザインされていないように見えますね。
ちなみにデザインには2つの意味があります。
ビジュアルをデザインするグラフィックデザインと全体の計画を構築するグランドデザインです。
ブランディングや販促計画などを一式でやってた経験上、残念な仕組みにはモニョっとします。
第2、第3の矢が用意されていて、今はまだサポーターを集めている段階かもしれません。
このブログはあくまで今見えているものについての意見です。
ご了承くださいませ。
アプリ「名古屋なんて、だいすき」が残念な5つの理由
僕の感じた残念な理由を5つ挙げます。
残念その1 閉じたサービス
ベースになっているのがavexの提供するアーティストのファン交流システムです。
これね、好きなアーティストについて語り合うためのものです。
言ってみればmixiのコミュニティのようなもの。
写真投稿機能もFacebookやInstagram、Twitterなど他のSNSに同時投稿とかできません。
つまり、名古屋好きが集まって、内輪で盛り上がるための仕様です。
これでは本来の目的である拡散ができません。
でもなぜか、アプリに投稿された写真を閲覧するコーナーでは、写真をTwitterに投稿できるツイートボタンがある。
なんと中途半端な仕様。
残念その2 アプリであること
そもそも名古屋に関心がないとダウンロードしてもらえません。
ですので、名古屋をPRする前にアプリのPRをしなければなりません。
それって本末転倒じゃないですか?
また、Webサイトであれば検索されればワンクリックでサイトに到達しますよね。
でもアプリだとインストールする手間がかかります。
情報提供までの動線が長いということは、そこに到達する人が少なくなるということ。
アプリであることは2つの意味で残念なのです。
残念その3 投稿者負担の多い利用規約
投稿写真の広告利用を考えてるから投稿規約が厳しめ。
著作権は投稿者にあるけど、写真の使用に関してはavexと名古屋市が自由に使える。
著作者人格権も行使できません。
投稿された写真がサービスにログインしていなくても見ることができるオープンなTwitterとは違い、「名古屋なんて、だいすき」はクローズなサービスです。
このクローズなサービス内で投稿した写真が、他の媒体に使用された時に「やめて!」って言えないんですよ。
なぜなら著作者人格権に含まれる公表権が行使できないから。
それはどうなの?って思うよね。
愛知の県民性=強烈な名古屋人の性格
愛知県人=名古屋人は、尾張藩が勤倹貯蓄を奨励した歴史からか、実利性に富み、保守的でケチな性分が染みついている。ぜいたくを戒めることにかけては、全国一だ。リスクのありそうなものには手を出さず、いざというときに備えて貯蓄に励む。ただし、貯め込んだカネは自宅で保管する人多数。実際、名古屋では自宅に保管していたカネが盗難に遭う事件も頻発。「他人を信じられない」名古屋人の性格が窺われる。
PRESIDENT Online
http://president.jp/articles/-/15149/
投稿者に厳しい投稿規約を読めば、リスクを嫌う名古屋人は投稿を渋るんじゃないかしら。
残念その4 ユーザーのステータスにメリットがない
アプリのユーザー、つまり名古屋のサポーターなのだが、アプリ内の行動によってステータスが上昇する。
ステータは4段階あって、最上位は「ときんときんサポーター」。
「ときんときん」はとんがってる様を表すこの地方の言葉(三河出身の僕も使うけどね)。
感度の高さを表しているそうです。
でもこれ、称号を得られるだけで実利がないから、目指そうとは思わないよね。
どうせなら、ステータスが上がったら市民税の軽減してほしい。
これなら話題にもなるし、サポーターの投稿も活発になると思うよ。
残念その5「いいね!」を「だいすき」にしたこと
名古屋なら「ええがね!」でしょ。
地域性を出さなくてどうするのよ。
おまけの残念
アプリ名でもあり、キャンペーンのコピーでもある「名古屋なんて、だいすき」。
広告表現では否定的なワードは使うべきではないと長年指導を受けてきた僕には、違和感あります。
行政はコントロールできないものを嫌う
だからTwitterなどの既存のサービスを利用せずに新しくものをつくる。
でも、リスク回避が念頭にあるから、ユーザーの自由度が低い。
周知拡散が目的なのに、結果として閉じたものをつくりがちです。
似たようなことは、公益法人のwebサービスをつくる時にもあったなぁ。
果たして閉じたサービスで名古屋の魅力を発信・拡散できるのか?
できないよね。
ユーザーの自己顕示欲を満たすから拡散が生まれるわけで、閉じたサービスでは自己顕示欲が存分に満たされないんだから。
僕ならこうする 「ええがね!名古屋!」
ハッシュタグの周知と、タグのついたコメント&画像を埋め込み表示するサイトつくればそれでいいよね。
あとは行政の予算でハッシュタグの告知するだけでOK。
投稿を盛り上げるなら、サイトに懸賞かければいい。
大事なことは、ユーザーをコントロールしようと思わないこと。
それが見えたらユーザーは乗ってこない。
ネットに関してはユーザーの方が一枚上手だからね。
メインはハッシュタグの認知だから、行政がリスク負わなくていいのもメリットだと思います。
市民税払ってるんだから、これぐらい言ってもいいよね。
ちゃんと代案出してるんだし。